アパレル業界のECサイト事情・業界動向
現在さまざまな分野でEC化が進められていますが、アパレル業界も例外ではありません。こちらの記事では、アパレル業界におけるEC市場の動向について解説します。さらに、業界の課題や今後の予測についてもまとめました。
アパレルのEC市場と動向
アパレル業界のEC市場について見ていく上で、まずは物販系分野におけるEC化率とBtoC-ECの市場規模についてご紹介していきます。経済産業省が行った電子商取引に関する市場調査によると、物販系分野の2021年のEC化率は8.78%、市場規模は13兆2,865億円。そして2022年のEC化率は9.13%、市場規模は13兆9,997億円となっていますので、5.37%の増加となっています。
さらに各分野のデータを見てみると、衣類・服装雑貨の分野においては、2021年のEC化率は21.15%、市場規模は2兆4,279億円。2022年はEC化率が21.56%、市場規模が2兆5,499億円となっており5.02%増という状況となっています。
また他の分野と2022年時点でのEC化率を比較すると、書籍、映像・音楽ソフト分野は52.16%、生活家電、AV機器、PC・周辺機器等分野は42.01%、生活雑貨、家具、インテリアは29.59%となっており、アパレル分野は物販系分野の中で4番目に高いEC化率となっています。この点から、アパレル分野は比較的EC化が進んでいる分野であるといえるでしょう。
アパレル業界は、コロナ禍による外出自粛・行動制限などの影響により店舗の休業や営業時間を短縮するなどの対応が求められる状況となったことから店舗での需要が激減しましたが、EC需要が大幅に増加しました。そのため、コロナ禍ではEC市場の成長が顕著だったものの、実店舗での購買需要が再び増加してきたことに伴いEC市場の成長率は鈍化傾向にあります。
物販系分野のBtoC-EC市場規模
アパレルの業界が抱える課題
上記でご紹介したように、アパレル業界におけるEC市場規模は拡大している状況です。ただし、EC化率を見るとおよそ20%となっていることから、現在も実店舗へのニーズが高い状況であるといえるでしょう。そこで、アパレル業界におけるECサイトの課題についてまとめました。
実店舗の利便性の高さ
現在、全国にはアパレルの実店舗がたくさんあります。さらに、アクセスの良い場所にある店舗も多いため、まだまだ多くの人が実店舗を利用している状況といえるでしょう。すなわち、自宅の近くや通勤・通学途中などによりやすい場所に百貨店やショッピングモールがあることから、あえてECサイトで服を購入する必要がないと考えている方もいるといえます。
ECサイトでは試着ができない
ECサイトの場合、気になるアイテムを試着することができません。この点から、着用した時のイメージや素材の質感などが分かりづらい点もECサイトの課題のひとつといえます。特に、衣類のサイズについてはお店ごとに微妙に変わってくるために、自分の体にピッタリ合うサイズかどうかはっきりとわからないまま購入しなければならないケースもあります。中には、試着なしでアイテムを購入することに抵抗を感じる方もいるでしょう。
この点から、ECサイトでは「実際に試着してから購入したい」と考えているお客さまのニーズを満たすための工夫が必要となってくるわけです。
アパレル市場の売り上げが減少している
前述の通り、アパレル業界におけるEC市場は成長傾向にあるものの、業界そのものは1991年頃にピークを迎え、それ以降減少傾向にあるといわれています。これにはさまざまな要因が関わっていますが、例えば低価格なブランドが普及したこと、少子高齢化が進んでおりターゲット層とする年代の人口減少が減っていることなどが考えられます。
このような状況であるため、国内市場のみで運営していくには厳しい状況になっているともいえます。そのため、国内はもちろんですが海外からの需要についても取り込みを行っていけるように工夫することがポイントになってくるといえるでしょう。
在庫管理の難しさ
アパレルのECサイトの場合、在庫管理が問題になりやすい傾向があります。例えば、アパレルのECサイトで取り扱っている商品の場合、サイズが合わない・購入したもののイメージと異なるなどの理由で、返品業務が発生します。もともと在庫の移動が多いことに加えて、返品商品をアウトレット品として再販する場合などは、その商品を別に保管しておく必要があるなど在庫管理に手間がかかってきます。
また、トレンドの移り変わりの激しさなどによる需要の予測が難しい点、複数の販売チャネルを設けていることにより在庫管理が複雑になっている点なども、アパレル業界のECサイトにおいて在庫管理を難しくしている要因であるといえます。
このような点から特に複数の販売チャネルを持っている場合などは、在庫管理システムを導入したり、物流業務をアウトソーシングするなどの取り組みが必要になってくると考えられます。
アパレル業界の今後
上記のようにさまざまな課題がありますので、アパレル業界のECサイトにおいて売上を伸ばしていくためにはさまざまな工夫や取り組みが必要であるといえます。考えられる対策や、アパレル業界のトレンドについて見ていきましょう。
オンライン接客の強化
コロナ禍による外出自粛期間となった際、実店舗を利用できない状況からECサイトを利用してアパレル商品を購入する消費者が急激に増加しました。その際から、アパレルのECサイトにおいてもオンライン接客強化の動きが強まっています。
例えば、ECサイトでは実際の商品を見られないといった課題に対応するために、消費者が気になる商品をイメージしやすいように鮮明な商品写真の掲載やスタッフが着用している写真を掲載する、詳細なサイズ説明を行うといった工夫が行われています。
さらに、問い合わせに対して電話やメールで対応するだけではなく、AIの自動会話プログラムなどを導入することで、消費者が持つ疑問を迅速に解決しようとするECサイトもあります。オンラインを利用する人が少しでもストレスなく購入できるような仕組みを作るのは一つのキーポイントになっています。
ライブコマースを導入する
ECサイトとライブ配信の組み合わせによる販売手法を「ライブコマース」と呼びます。「商品を自分の目で確かめてから購入したい」と考える消費者のニーズが多い中、ライブコマースの導入により商品の魅力やイメージを掴みやすくなるメリットが得られます。
また、ライブ配信ではユーザーが気になる点をリアルタイムで質問可能です。そのため、不安や疑問点をその場で解決できることに加えて、双方向のコミュニケーションを楽しめます。また、ライブ配信の際にスタッフが実際に商品を着用しているので、着用時の雰囲気や素材感が伝わるという面もあります。
このように、ライブコマースを活用することによりECサイト上だけでは伝えられない部分をカバーできます。何より大事な点としては、消費者は本当は何を確認したいのか、なぜ確認する必要があるのかという言葉では表現しきれていないけれど思っていることへ的確に対策できるかがとても大事になってきます。
サステナブルファッションへの切り替え
コロナ禍を経て、消費者の中で「持続可能な社会への実現」への意識が高まったことにより、サステナブルファッションへの関心が高まっています。例えば、アパレルアイテムの受注生産やリサイクル素材を使用するなど、さまざまな形でのサステナブルファッションへの取り組みが進められています。このように、「良い商品を長く着たい」「環境にやさしい商品を選択したい」というニーズが増加傾向にあると考えられています。消費者の関心が変化する中で、求められている必要な情報は提供できているのか、欲しい商品を見つけられるサイト導線になっているのかは、常にアンテナを立てて軌道修正していく必要があります。
オンラインとオフライン両方における顧客体験がポイント
新型コロナウイルスの影響によって、アパレル業界でもECサイトを利用する方が増えました。ただし、アパレル業界においては実店舗を利用したいと考える人も多いため、実店舗とオンラインの併用がより一般化していくことが考えられます。
そこで重要となってくるのが、オンラインとオフライン両方における顧客体験であるといえるでしょう。本記事でご紹介しているように、ECサイトにおけるオンライン接客の強化やライブコマースの導入により、これまでECサイトで商品を購入した経験がない人も「購入してみよう」「試着をしていなくても十分にイメージできる」という気持ちを持つきっかけ作りができると良いでしょう。今後は、顧客体験を強化していくために利用者の目線でのさらに深い理解がカギになってきます。
- 監修
- コマースとCXの
リーディングカンパニー
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ZETA株式会社はEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」をはじめとして、EC利用者の体験を包括したマーケティングの実践をサポートする『ZETA CXシリーズ』の開発・提供に取り組んでいる企業です。アパレル、家具・家電・日用品、BtoB問わず、国内大手ECに多数の導入実績を誇っています。