書籍業界のECサイト事情・業界動向
現在さまざまな業界においてEC市場が広がりを見せています。そこでこちらの記事では、書籍業界におけるEC市場の現状や課題などについて解説していきます。EC市場に興味のある方などはぜひ本記事を参考にしてみてください。
書籍のEC市場と動向
経済産業省では、「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」を実施しており、その調査結果が2023年8月に発表されています。この調査結果によると、2022年における日本国内のBtoC-EC市場の規模は、「22兆7449億円」であり、前年と比較すると9.9%増という結果になっています。
BtoC-ECの市場は「物販系分野」、「サービス系分野」、「デジタル系分野」の3つに分けられていますが、書籍はこのうち「物販系分野」に含まれます。2022年における物販系分野のBtoC-EC市場は「13兆9,997億円(前年対比5.37%増)」です。そのうち「書籍、映像・音楽ソフト」のEC市場規模は2021年が「1兆7,518億円(前年比7.88%増)」、2022年が「1兆8,222億円(前年比4.02%増)」で、増加傾向が見られます(こちらの「書籍」にはデジタル書籍は含みません)。
以上の点から考えると、書籍や映像・音楽ソフトの分野においては、EC市場の規模が拡大しているといえます。
参照元:経済産業省|令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書
(https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002-1.pdf)
EC化率について
「書籍、映像・音楽ソフト」分野におけるEC化率は、2021年が46.20%、2022年は52.16%です。さまざまな分野の中でもこの「書籍、映像・音楽ソフト」分野は特にEC化が進んでいる分野であるといえます。
ただし、公益社団法人全国出版協会のデータを参照すると、2022年における紙の出版物の市場規模は1兆1,292億円であり、前年と比較すると6.5%の減少となっています。このように紙の出版市場規模は減少しているものの、書籍のBtoC-EC市場は緩やかな拡大を見せてきました。
しかし新型ウイルス感染症の拡大による巣ごもり需要が落ち着きを見せたことや、昨今の物価高騰などの影響によって娯楽品や自分の趣味に関連するアイテムの買い控えが発生したことによって、「書籍、映像・音楽ソフト」分野の市場規模の伸びは緩やかになっています。
参照元:公益社団法人 全国出版協会|2022年度 事業報告
(https://www.ajpea.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/07/事業報告書%E3%80%802022年度全協.pdf)
書籍の業界が抱える課題
紙ではなくデジタルコンテンツの需要増
近年の傾向として、デジタルコンテンツへの需要が非常に高まっているという点が挙げられます。書籍業界においても、紙の書籍ではなく、主に電子書籍を購入して読む場面が多い人もたくさんいるのではないでしょうか。
電子書籍は実態を持たないデータであることから収納に場所を取らず、さらに持ち運びの負担にもならないといったメリットがあるほか、購入する場合にも店舗に足を運ぶ必要がなく、在庫があるかどうかの心配をする必要もありません。そして配送を待つ時間もなく購入してすぐに読めるため、非常に手軽であるといえます。
ただし、電子書籍の割合はその大半がコミックを占めています。これは、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけとした巣ごもり需要により、電子コミックの利用者が大幅に増え、そのまま継続という形で利用者が拡大しているためであると考えられます。この点から、コミック以外の活字のメディアについては現在も紙媒体のニーズがあるといえます。
ただし、やはりデジタルコンテンツへのニーズが高まっていることからも物販市場は縮小傾向であり、書店などの実店舗も年々減少しています。分野としての市場は拡大しているものの、ECサイトにおいても今後の生き残りは大きな課題になってくるといえます。
中古商品を手に入れやすい
書籍分野における特徴のひとつとして、「中古商品を安価に手に入れやすい」点が挙げられます。古本を販売する中古販売サイトやオークションサイトも多くあります。
書籍は、新品も中古商品もその内容には差がありません。そのため、「あえて新品を購入しなくてもよい」と考える人もたくさんいます。この点から考えると、書籍を取り扱うECサイトにおいては、「新品でもここで本を買いたい」と感じてもらうための工夫をすることが非常に重要なポイントになってきます。
再度同じものが購入される可能性が低く、在庫管理の難易度が高い
書籍は消耗品ではないことから、多くの場合1回購入したものを再度購入する可能性は低いといえます。中には同じものを2冊購入し、閲覧用・保管用とする人もいるようですが、このように同じものを購入するケースはそこまで多くはありません。このような点から、書籍は再度同じものが販売される可能性が低く、販売する側にとっては在庫管理の難易度が高くなります。
ECサイトを運営するにあたっても、在庫管理においては同じことがいえるため、たとえば在庫を少しずつ確保して在庫を調整したり、需要が高い特別版や限定版の商品に注力したりするなどの方法を検討する必要が出てきます。近年では、これまで書籍を取り扱っていたものの電子媒体へ移行するECサイトが増えているといわれていますが、これは上記に挙げた在庫管理の難しさがあるため。在庫リスクのない電子書籍を取り扱っていきたい、と考えるケースが多いことが背景のひとつであると考えられています。
書籍の今後
近年では、電子書籍や電子雑誌といった「電子出版」の市場規模が拡大傾向にある状況です。特に2022年においては、「書籍、映像・音楽ソフト」分野の伸び率を大きく上回る成長が見られる状況となっています。ただし、上記でご紹介した通り電子出版市場の多くはコミックが占めているという傾向も見られます。この点から、コミックに関連する紙での出版市場への影響は考えられますが、コミック以外の電子出版物が紙の出版物に与える影響はそれほど大きくないなどの意見もあります。
また、人によっては「家では紙での書籍を読み、外では電子書籍を読む」といったように書籍を読む場所や、「コミックは電子書籍、実用書は紙の書籍」のようにジャンルで使い分けるケースもあるといえます。このことから、今後は紙の出版市場と電子書籍の市場が共存していくことも予想されています。
魅力ある体験を提供することが大切
本記事では、書籍業界における市場動向やEC化の現状、今後の課題などについて紹介してきました。デジタルコンテンツへのニーズの高まりや中古商品を手に入れやすいといった背景から、ECサイトで書籍の販売を行う場合には「ここから購入したい」と感じられるような工夫を行うことが非常に重要です。さらに、書籍は再度同じ商品が買われる可能性が低く在庫管理の難易度が高い点もECサイトを運営する上で悩みのタネとなりやすい部分ですが、例えばファンが多い商品に着目する、少量ずつ仕入れを行うなどの方法が考えられます。
いずれにしても、消費者にとって魅力あるECサイトを作ることがポイントとなってきますが、本サイトではZETA株式会社監修のもとで、ECサイトにおけるCXの向上を目指す中で知っておきたい施策を紹介しています。これからEC事業を伸ばしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

- 監修
- コマースとCXの
リーディングカンパニー
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ZETA株式会社はEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」をはじめとして、EC利用者の体験を包括したマーケティングの実践をサポートする『ZETA CXシリーズ』の開発・提供に取り組んでいる企業です。アパレル、家具・家電・日用品、BtoB問わず、国内大手ECに多数の導入実績を誇っています。