スポーツ業界のECサイト事情・業界動向
現在、さまざまな業界でEC市場の規模が拡大している状況です。そこでこちらの記事では、スポーツ業界におけるECサイト事情や業界の動向などについて解説していきます。また、業界における課題と今後の予測についてもまとめていますので、ECサイトに興味がある方はぜひ参考にしてください。
スポーツ業界のEC市場と動向
経済産業省では「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」を実施し、その調査結果について2023年8月に公表しています。その結果を参照すると、2022年における日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は22兆7449億円であり、前年と比較すると9.9%の増加となっています。
スポーツ業界におけるEC市場を考えると、物販やチケット販売などさまざまな分野が関連してきます。具体的には衣類や服飾雑貨、子供服、スポーツ用品といった製品群から構成されている「衣類・服装雑貨」分野や、インターネットを利用した「チケット販売」などの分野が挙げられます。
「衣類、服飾雑貨分野」におけるBtoC-ECの市場規模
まず「衣類、服飾雑貨」におけるBtoC-ECの市場規模を見てみると、2兆5,499億円で前年比5.02%増加という状況であり、EC化率は21.56%となっています。前年と比較すると、この分野の市場規模は右肩上がりであり、EC化率も高い割合であるといえます。
ただし、この「衣類、服飾雑貨」のカテゴリーは、衣類(インナーウエア・アウターウエア)、服装雑貨(靴、鞄、宝飾品、アクセサリー)、子供服(ベビー服含む)、スポーツ用品といった製品群にて構成されています。売上の内訳を見ると、約半分程度をアウターウェアが占めており、次いで服飾雑貨系、インナーウェアが続く形となっており、スポーツ用品の割合はさほど高くない状態にあると考えられます。
「チケット販売」におけるBtoC-ECの市場規模
チケット販売のBtoC-ECとは、インターネットでのチケット申し込みのことを指しており、現在サッカーや野球など、さまざまなスポーツの観戦チケットがインターネットで販売されています。
チケット販売のBtoC-ECの市場規模は、2021年に前年と比較して大幅な増加が見られていますが、2022年も引き続き増加の傾向が見られ、市場規模は5,581億円(前年比73.89%増加)となっています。これは、音楽公演の全国ツアーや大規模フェスなどに加えて、プロスポーツの国際大会等の開催が関連していることから、増加傾向にある状態であるといえます。
参照元:経済産業省|令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書
(https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002-1.pdf)
スポーツ業界が抱える課題
現在、スポーツ業界においてもEC化は進められている状況ではあるものの、そこにはさまざまな課題があると考えられています。
アパレル業界と比較するとEC化が行いにくい
前述の通り、スポーツ業界が関わる分野である「衣類・服装雑貨等」を見てみると、アパレル業界と比較した場合、スポーツ業界はEC化が遅れている状態であるといえます。その原因としては、同じ会社だったとしても競技によって事業部が分かれている、ブランドごとにサイトが存在しているなどの理由が考えられます。この場合、すでにブランドごとに存在しているサイトをひとつのECサイトに集約しようとした場合、膨大な作業量になると予想されることから、ECサイト化になかなか踏み切れないのではないか、という意見もあります。
また、ブランド自体はユーザーに認知されており、よく閲覧されている特設ページなどがあったとしても、そこから自社ECサイトへの動線が弱いとなかなかECの利用率は上がっていかないため、スムーズに購入まで進めるように統合を進めていくことがポイントとなってきます。
実店舗とECサイトの連携が必要
大手のアパレル企業では、ECサイトと実店舗の連携に注力することで売り上げを上げているといった側面もあります。例えば、ECサイトで購入した商品を店舗で受け取れる、返品対応ができるなど、利用者にとって利便性が向上するサービスを提供しています。スポーツ業界においてもこの実店舗とECサイトの連携は重要なポイントであるといえます。
そのほかスポーツ用品の購入ができることに加えて、例えば施設利用の予約やスクールの申し込みなど、そのスポーツをする上で必要なサービスを利用できるサイトを用意しておくことによって、ユーザーの利便性をアップさせられます。
店舗の利便性が高くEC利用に移行できない
スポーツ用品を購入する際には、「実店舗に足を運んで試してから購入したい」というニーズが高い面があります。近年では大手のショッピングモールなどにスポーツ用品店のテナントが入っている、大型のスポーツ用品店が店舗を構えているなど、少し足を伸ばすだけで実店舗にアクセスできる状況であることが多いため、どうしても実店舗で購入する人が多いといった面があります。
また、スポーツ用品を購入する場合には、「オーダーメイドしたい」といったニーズも多くあります。スポーツ用品をオーダーメイドする場合には、ミリ単位での調整が必要になることもあるため、店頭のスタッフと細かい打ち合わせを何度も重ねた上で仕様を決定してオーダーをする流れになります。この点からECサイト上で同じような仕組みを作るのは難しいといえます。
このように、スポーツ用品の販売においては実店舗の利便性の高さがEC化に取り組む場合の課題となっている面もあります。
スポーツ業界の今後
ここまでご紹介してきたとおり、スポーツ業界においてはEC化に課題を抱えている状況にあるといえます。特にスポーツ用品の購入に関しては、「実店舗では実際に商品を確かめることができる」「インターネットだとサイズ感が分かりにくい」といった声もあり、実店舗での購入を選択する人が多い傾向があります。
このように、店舗でできることをECサイトでできるようにすることも、スポーツ業界のEC化においては大切なポイントであるといえます。さらにアパレル業界などで取り組みが行われているように、ECサイトと実店舗の連携を行っていく点もEC化を進めることを考えた場合に重要な点となってきます。
オンラインと実店舗の連携がポイントのひとつ
スポーツ用品の場合、アパレル以上に実店舗における試着や試用に対するニーズが高いといえます。実際の着用感や使用感を試してからでないと購入しにくい、と考えている人も少なからずいるのではないでしょうか。
そのため、スポーツ業界はECとの相性が良い業界であるとは言いにくい部分もありますが、必ずしもEC化ができないというわけではありません。例えば、店舗で必要なデータを測定し、そのデータをオンラインに連携することでおすすめの商品を紹介できるようになります。さらに、オンラインストアの購入ページにすぐに遷移して購入できるといったサービスを提供している事例も登場しています。
このように、オンラインとオフラインを連携させて新たな顧客体験を提供することによって、上記で挙げている課題を解決し、EC化へつながる大きな鍵となる可能性もあります。実店舗と同様に、商品についてしっかりと情報を得られ、納得してから購入できる流れを作るということも重要なポイントです。
本サイトではECサイトにおいてCX向上を目指す中で知っておきたい施策をご紹介しています。今後EC事業に挑戦したい、成果を上げていきたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

- 監修
- コマースとCXの
リーディングカンパニー
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ZETA株式会社はEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」をはじめとして、EC利用者の体験を包括したマーケティングの実践をサポートする『ZETA CXシリーズ』の開発・提供に取り組んでいる企業です。アパレル、家具・家電・日用品、BtoB問わず、国内大手ECに多数の導入実績を誇っています。