生活家電業界のECサイト事情・業界動向
多彩な業界でECサイトが取り入れられていますが、生活家電業界も例外ではありません。こちらの記事では、生活家電業界におけるEC市場の動向や業界特有の課題、今後の展望などについてまとめました。
生活家電のEC市場と動向
2023年8月に経済産業省によって発表された「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」を参照すると、2022年における日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模は「約22.7兆円」となっています。過去の値を見ると、2021年は約20.7兆円、2020年は約19.3兆円となっており、EC市場全体は拡大傾向にあるといえます。
そのうち、生活家電分野は「物販系分野」に該当します。そこで、物販系分野はどのような状況になっているかを見ていきましょう。2022年における物販系分野全体のBtoC-EC市場は「13兆9,997億円」で、前年比5.37%増の状況。そのうち「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」を見てみると「2兆5,528億円」となっており、2021年と比較すると3.84%増と市場規模は増加している状況です。
図表:物販系分野の BtoC-EC 市場規模及び EC 化率の経年推移(単位:億円)
生活家電におけるEC化率
生活家電分野においてもうひとつ注目しておきたいのが「EC化率」です。このEC化率とは、すべての商取引においてEC(電子商取引)の市場規模が占める割合を示しています。すなわち、インターネットを通じて商品が購入された割合を示しているということになります。
「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」のEC化率は2021年が38.13%、2022年は42.01%であり、物販系分野においてはEC化率が高いカテゴリであるといえます。
生活家電のEC化率が高いのはなぜか
上記でご紹介している通り、生活家電はEC化が高い分野であるといえます。ここでは、なぜこちらの分野のEC化率が高いのかを見ていきましょう。
インターネット上での比較がしやすい
生活家電は、ある性能を持つ商品を購入する場合に、インターネット上で複数の商品の比較検討がしやすい点が特徴のひとつです。家電の種類にはさまざまなものがありますが、例えば冷蔵庫やエアコンなど高額な商品も多くありますので、少しでもおトクに買い物しようとする際にはインターネット上にある比較サイトを確認する方も多いでしょう。
また、最近では比較記事のみならず、家電のレビューなどを行う動画も多く公開されているため、よりユーザーがインターネットで情報を探しやすい状況になっています。
家電を持ち帰る手間がない
ECサイトで家電を購入した場合、持ち帰りの手間が省けるメリットがあります。特に冷蔵庫や洗濯機など大きく重量もある家電の場合には、購入したら配送してくれるECサイトが非常に使い勝手が良いといえます。
家電量販店で購入した場合にも配送はしてもらえますが、まず店舗に足を運ぶことが必要ですし、店舗にて配送を依頼しなければなりません。場合によっては配送料が別途かかってしまうこともあるでしょう。
ECサイトの場合には、表示されている価格に配送料が含まれているケースも多くあります。しかもパソコンやスマートフォンなどを操作するだけで手軽に購入できる点に大きなメリットを感じている方も多いと考えられます。
店舗が異なっても品質や性能に差が出にくい
生活家電は、どこの店舗で購入しても品質や性能に違いが出にくい点もEC化率が高い理由といえるでしょう。例えば食品や衣料品は「どこのお店で購入するか」が非常に重要なポイントとなってきますが、家電製品の場合は「どこのメーカーの製品を購入するか」がポイントとなってきます。
すなわち、購入しようとしている家電のメーカーが高い評価であれば、どこのお店で購入しても品質は変わらないことから、さまざまなサイトを比較して可能な限り安価で購入したいと考える方が多いといえます。
生活家電の業界が抱える課題
生活家電業界のECサイトにおいて考えられる課題としては、下記のようなものが挙げられます。
集客をアップさせるための施策が必要
ECサイトがあったとしても、サイトにユーザーが来なければ売り上げが発生しないため、まずはどのように集客を行っていくかが重要です。特に、新規参入した中小のショップにとってはどう集客するかが難しいといえるでしょう。
集客をアップさせるには、WEB広告を活用したりSEO対策を行うなどの方法が考えられます。
リピーターを獲得するのが難しい
長期的に売上を上げるには、サイトを定期的に利用して買い物をしてくれる顧客、いわゆるリピーターが必要となってきます。しかし、家電業界のECサイトにおいてはリピート購入を獲得するのは難しいといえるでしょう。上記でご紹介した通り、家電のEC化率が高い理由の一つとして、製品の比較がしやすい点が挙げられます。他のサイトと比較しやすいということは、価格をはじめとする条件が良い他のサイトがあればすぐに他に流れてしまいます。
そのため、家電業界のECサイトではリピーターを獲得するのが難しいといえます。対策としては、例えばクーポンの配布での再来店を促す、閲覧履歴のある商品のセール情報などをお知らせするなどの方法が考えられます。そのほか、定期的に新商品を入荷するようにするなど、何度も見たいと思わせる「更新性」に注目すると良いでしょう。また、逆の視点ではリピーターを獲得できる仕組みが構築できるのであれば他社との差別化を図れる可能性もあります。
商品の魅力が伝わる工夫が必要
家電を販売するECサイトの場合、ユーザーに対して商品の魅力をどう伝えるかも重要です。リアル店舗の場合には、お店に訪れたお客様に対して販売員が商品の使い方や特徴、魅力などを口頭で伝えられます。その商品を購入するとどう生活が便利になるかといった点なども説明し、アピールできます。
しかしECサイトの場合には、直接商品について伝えられません。この点からECサイトは商品の魅力を訴求しにくい部分があるため、動画などの活用により魅力を伝えやすくなるでしょう。
物流拠点を整備する
全国に物流拠点を整備することで、リードタイムの短縮を行い、ユーザーの元に素早く商品を届けられます。しかし、拠点を増やすとそれぞれの拠点での在庫管理が必要となり、コストもその分かかってきます。家電業界のECサイトでは、少しでも安く購入したいと考えている人も多いことから、コストがかかる部分があると価格競争力を失ってしまう可能性も考えられます。
また、ユーザーは商品を配送してもらうにあたって、自分の希望の方法で商品を受け取れることを望んでいるという面もあります。この点から、ECサイトには日時指定・受け取り方法の指定などを選択できるようにするなどの工夫が必要になってきます。
生活家電の今後
今後生活家電業界でECサイトを運営するにあたり、押さえておきたいポイントについてまとめています。
リアル店舗とECサイトの融合
ユーザーの利便性向上に向け、リアル店舗とECサイトの融合や連携が進められていくと予想されます。リアル店舗であればお試しができるなど商品の魅力を店舗にて伝えられます。さらにECサイトで注文した商品を好きな店舗で受け取れるようにするなどの工夫を行うことによって、ユーザーの利便性をより向上させられるでしょう。
販売経路の多様化
現在は、ECサイトはPCではなくスマートフォンからの利用が多くなっている状況といわれています。今後も利用率はさらに上がっていくと考えられますし、上記でご紹介した通り実店舗とネットでの販売の連携も進められていくと考えられます。
また、今後はSNSの活用も進んできているため、キャンペーンを行う場合などにはSNSやDM、PCやスマートフォン、実店舗やインターネットといったように、さまざまな経路を横断するような取り組みを行っていく企業も増えていく可能性もあります。
家電ECにおけるリユース・リサイクル市場が広がりを見せる
近年では、家電ECにおけるリユース・リサイクル市場が広がりを見せている点がポイントのひとつといえます。これは、大手家電量販店などにおいて家電の宅配回収を行い、リユース・リサイクル品の販売サービスを行う業者が増えてきているため。この傾向の背景にあると考えられるのが、半導体の不足による新品家電の不足・物価高騰の影響です。その代替として、安価に購入できるリユース家電の人気が上昇しているといえるでしょう。また、消費者におけるサステナビリティ意識の高まりも影響していると予想されます。
傾向として、小物家電を中心として取り扱いをスタートする業者が多いものの、大物の白物家電を扱うケースも見られるため、生活家電市場の拡大に寄与することが期待されています。
本記事では生活家電業界のECサイトについて、現状・課題・今後の展望などについて解説を行ってきました。家電業界はECサイトとの相性が良くEC化率が高い業界でもあります。ただし、どのようにユーザーの利便性を高めるか、また集客やリピーターを増やす方法について検討しながら運営を行っていくことが、売上につなげるために重要であるといえるでしょう。
ユーザーの利便性を高めるために考えられる取り組みのひとつが、オフラインとオンラインの融合。このように、ユーザーがさらに手軽に家電を購入できるよう、さまざまな施策に取り組んでいくと良いでしょう。
- 監修
- コマースとCXの
リーディングカンパニー
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ZETA株式会社はEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」をはじめとして、EC利用者の体験を包括したマーケティングの実践をサポートする『ZETA CXシリーズ』の開発・提供に取り組んでいる企業です。アパレル、家具・家電・日用品、BtoB問わず、国内大手ECに多数の導入実績を誇っています。