飲食店業界のECサイト事情・業界動向
近年、さまざまな業界においてEC市場の発展が見られます。飲食店業界においてもECサイトを活用している店舗も多く見られることから、参入を検討している方もいるのではないでしょうか。そこでこちらの記事では、飲食店業界のEC市場と動向や、業界特有の課題、今後の展望などについてまとめました。
飲食店のEC市場と動向
経済産業省から2023年8月に発表された「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2022年におけるBtoC-EC市場(日本国内)の規模は「22兆7449億円」となっています。この数値は前年と比較すると9.9%の増加となっていることから、EC市場全体の規模は増加傾向にあるといえるでしょう。
そのうち、飲食店のEC市場については「サービス系分野」に属しています。こちらの分野全体の市場規模は2022年で「6兆1477億円(前年比32.43%)」となっていますが、その中の飲食サービスは「6,601億円(前年比33.69%増)」、フードデリバリーサービスは「5,300億円(前年比10.56%増)」という状況となっています。
サービス系分野のBtoC-ECの市場規模
(https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002.html)
2022年は飲食サービス・フードデリバリーいずれも増加
上記の調査における「BtoCにおける飲食サービス」とは、インターネットを使用した飲食店の予約を指しています(料理内容の予約を問わず、事前のネット予約全て対象)。この分野の市場規模は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から2020年、2021年は減少傾向にあったものの、2022年には大幅に増加しています。
また、フードデリバリー分野においては新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりEC市場規模が拡大。特に2021年においては市場規模4,794億円となっており、前年比37.48%と大幅な拡大となっています。その後消費者の外出が増えたことから伸び率はやや鈍化傾向が見られるものの、市場の拡大は現在も続いていることから、フードデリバリーの利用が生活に定着しつつある点を示しているといえるでしょう。
参照元:経済産業省|令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書
(https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002-1.pdf)
飲食店の業界が抱える課題
ここでは、飲食店がこれからECを始めるにあたって課題となる可能性がある点についてまとめています。どのような点が課題となってくるのかあらかじめ確認しておきましょう。
扱う食品に応じた許認可が必要となる
飲食店がECをスタートするにあたっては、扱う食品に応じて許認可が必要になります。もし許可が必要にもかかわらず無許可で販売を行うと処罰対象となってしまうため、販売する食品に応じてどのような許認可が必要なのかはあらかじめ確認しておきましょう。この許認可は、「食品衛生法で定められたもの」と「各都道府県の条例により定められているもの」がありますので、双方の確認が必要となります。
また、ECで食品販売を行う場合には、食品表示ラベルの貼付を行うことが食品衛生法で定められている点、消費者が食べるまでに日数が経過するものについては消費期限や消費期限の設定が必要となるなど、さまざまな点に注意が必要です。
保存形態とパッケージについて検討する
食品をインターネットで販売するにあたっては、商品の劣化を防ぐための保存技術に加えて、配送に耐えられるだけのパッケージを用意することが必要になります。保存形態は「冷凍」「冷蔵」「常温」の3種類がありますが、どれを選択するかは販売する商品によって異なってきます。
例えば消費者の調理のしやすさを考えた場合には冷蔵という選択肢を選びたくなります。ただし、冷蔵保存は店舗側に高い調理技術と保存技術が求められる面がある上に、賞味期限も短いことから在庫管理が難しい、という問題も生じてきます。このような面を考慮しながら、どのような保存形態を選択するかを十分に検討する必要があるといえるでしょう。
設備投資が必要になることがある
飲食店でECを導入したいと考える場合には、店舗運営と異なる設備が必要となるケースがあります。例えば、商品を包装するための真空包装機や急速冷凍機などの導入が必要になる場合もあるでしょう。このように、ECを開始するにあたって設備投資を行う可能性がある点についてはあらかじめ検討しておくことが大切です。
上記のような機器のほか、取り扱う食品の特性に合わせた梱包材や配送料など、発生する費用にはどのようなものがあるのかを把握した上での検討が必要となってきます。
実店舗の強みを活かしにくい
実店舗を運営しており、これからECを運営しようと考える場合、実店舗の強みが活かしにくい場合があります。たとえ実店舗を訪れる顧客からお店の雰囲気が高評価だったとしても、ECの顧客が商品を購入する決め手にはなりません。たとえ人気店だったとしてもECで必ずしも成功するとは限らない点が難しいところといえます。
ECでの販売を始める場合には、商品のみで消費者を引きつけられるように写真や説明文、価格の設定などを十分に検討する必要があります。
飲食店業界の今後
飲食店業界においてECの運営を行おうと考えている場合、知っておきたいポイントや対策についてご紹介します。
フードデリバリーのEC市場はこれからも伸びる可能性
フードデリバリーの注文方法には、Webサイトやアプリを利用して注文するほか、飲食店に直接電話をして注文するという方法もあります。このことからフードデリバリーを利用する消費者の中には、直接飲食店に電話をして注文をする消費者もある程度いると考えられますので、フードデリバリーのEC市場についてはまだ伸びしろがあると考えられています。
競合店への対策が重要
ECで商品を販売する場合には、店舗の立地など地理的な条件が影響しないため、同じジャンルの商品を販売する競合が非常に多くなるケースも考えられます。このような競合店との競争を勝ち抜くには、実店舗営業により蓄積してきたノウハウを活かしながら、消費者にアピールしていくことがポイントとなってきます。
商品の魅力を高めるのはもちろんですが、集客対策や販促活動を行って、競合との差別化に取り組んでいくことが大切です。
食品ロス削減への取り組みが必要
飲食店においては、食品ロスを削減するための対応も重要な取り組みであるといえます。現在、日本における食品ロス量は年間522万トンとなっています(2020年度推計)。この食品ロスのうち、事業系は275万トン、家庭系は247万トンとなっていることから、事業者と家庭双方からの取り組みを行うことが必要。外食事業者の場合には作りすぎや食べ残しが食品ロスとなっている傾向があります。
このような食品ロスへの取り組みとして、近年欧州を中心に「フードシェアリングサービス」が注目されています。これは、予約のキャンセルなどで発生してしまった余り物の食品や、味・品質には問題ないものの見た目の悪さで提供が難しい商品などについて、フードシェアリングサービスを利用することで廃棄せずに消費者への提供を可能とするものです。
このように、ECサービスに限らず、飲食店を経営していく中では食品ロス削減への取り組みも重要なポイントとなってくるといえるでしょう。
オンラインでの取り組みがより重要となる
こちらの記事では、飲食店業界のEC市場の動向や課題などについて解説してきました。飲食業界のEC市場は現在拡大傾向にあることから、参入したいと考える方もいるのではないでしょうか。その場合には、飲食店業界ならではの注意点や課題などがあるため、よく確認しながら進める必要があるといえます。
また、消費者に選んでもらえる店舗となるには、オンラインでの取り組みが重要になってきます。どうしても競合店が多くなってくることから、オンラインにおいてどのように集客するのか、他店との差別化をどのように行うのかを十分に検討することが大切であるといえるでしょう。

- 監修
- コマースとCXの
リーディングカンパニー
sponsored byZETA株式会社

ZETA株式会社はEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」をはじめとして、EC利用者の体験を包括したマーケティングの実践をサポートする『ZETA CXシリーズ』の開発・提供に取り組んでいる企業です。アパレル、家具・家電・日用品、BtoB問わず、国内大手ECに多数の導入実績を誇っています。