化粧品業界のECサイト事情・業界動向

インターネットの普及によってEC市場が急速に発展してきました。化粧品業界も例外ではなく、多くの企業がEC事業を手がけています。しかし化粧品業界特有の事情によってEC化にはさまざまな課題があるといえます。そこでこちらの記事では、化粧品業界のECサイト事情や業界の動向についてご紹介します。

目次

化粧品のEC市場と動向

化粧品のEC市場と動向を知っていくにあたり、はじめに物販系分野におけるEC化率とBtoC-ECの市場規模を見てみましょう。経済産業省による電子商取引に関する市場調査の結果によると、2021年における物販系分野全体のEC化率は8.78%となっていますが、市場規模は13兆2,865億円、2022年になるとEC化率は9.13%、市場規模は13兆9,997億円となっており、5.37%の増加となっています。

さらに、物販系分野の中でも化粧品・医薬品分野について見てみます。化粧品・医薬品分野では、2021年のEC化率は7.52%、市場規模は8,552億円ですが、2022年のデータを見るとEC化率は8.24%市場規模は9,191億円となっており、前年と比べると7.48%の増加となっています。

化粧品・医薬品分野においてはBtoC-ECの市場規模は増加傾向にあるといえます。ただし、EC化率については他の分野と比較した場合、まだ低い状況となっています。例えば同じ物販系分野における2022年のEC化率を見ると、書籍、映像・音楽ソフト分野は52.16%、生活家電、AV機器、PC・周辺機器等分野は42.01%、生活雑貨、家具、インテリアは29.59%、衣類・服装雑貨等は21.56%。これらの分野と比較すると、化粧品・医薬品分野のEC化はまだ遅れている状況であるといえるでしょう。

物販系分野のBtoC-EC市場規模
物販系分野のBtoC-EC市場規模

参照元:経済産業省ウェブサイト
(https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002.html)

化粧品の業界が抱える課題

続いて、ECサイトに関連する化粧品業界の課題について見ていくことにしましょう。

商品の魅力が伝わりにくい部分がある

ユーザーが化粧品を選ぶにあたっては、「色」「香り」「自分の肌に合うか」などの部分が重要になってきますが、実際に店舗に足を運び、商品を使って試してみないとわかりにくい部分があります。特に、百貨店などで販売されている高価格な商品はその傾向が強いといえるでしょう。

また、人によっては美容部員からアドバイスをもらいながら化粧品を選びたいと考えているケースもあるでしょう。

Webマーケティングの難易度の高さ

化粧品業界は、デジタルマーケティングの難易度が高いためにECサイトでの売上が延ばしにくい面があります。Webで販促活動を行うにあたっては、広告出稿・SEO対策・SNSを使用した発信などが考えられますが、こちらの分野には資本力を持つ大手企業が多く参入しており、さらにWeb広告は出稿費が高騰している傾向があります。このような点から、無思考で戦略を立てずに販促活動をしても効率よくECサイトでコンバージョンを獲得することが難しい業界であるといえます。

化粧品の購入に関するトラブルが多かった

インターネットやSNSではよく化粧品の広告を目にします。その中では初回限定割引でおトクに購入できる点をアピールするものも多くありますが、このような広告においては、かつて「お試しのつもりでオンラインで購入したら、定期購入することになっていた」というケースが多く見られました。

このような購入トラブルの是正を目的として、2022年6月1日に特定商取引法が改正されています。改正に伴い、ECサイトの最終確認画面に詳細な注文内容を表示する義務が課され、消費者を誤認させるような表現が禁止されています。このような流れから、これまで多かった化粧品ECのトラブルが是正されることによるEC化率の向上が期待されているといえます。

オフライン店舗の利便性

例えば、百貨店やドラッグストア、雑貨店に加えて、近年ではコンビニエンスストアでも化粧品を取り扱っている店舗があります。中でもドラッグストアは全国的に展開しているため、気軽に立ち寄ることができ簡単に自分が欲しいと思う化粧品が手に入る状況となっています。また、日用品を買いに行きがてら化粧品を購入することも可能です。さらにオフライン店舗ではテスターで自分の肌に色が合うかなどを確かめることもできます。

以上から、化粧品については直接オフライン店舗で手軽に購入できるなどECサイトで購入するよりも利便性が高いため、ECサイトにおける売上が伸びにくいと考えられています。

化粧品業界の今後

上記のように、化粧品業界におけるEC市場はさまざまな課題があるために、売上を伸ばしていくのには工夫や対策が求められます。考えられる対策について見ていきましょう。

オンライン接客ツールの活用

例えば、Web会議サービスのZoomやチャットボットなどのオンライン接客ツールの積極的な活用を行うことが対策のひとつといえるでしょう。化粧品を購入する際には「実際に試してみたい」「美容部員に相談したい」というニーズがあり、この部分が課題となっていますが、オンライン接客ツールの活用によって課題の解決につなげられます。

また、化粧品を購入したいと考える人の中には、仕事が忙しかったり、小さな子どもがいたりしてゆっくりとお店で化粧品を選ぶ時間がない人、実店舗が遠い人もいるでしょう。このような人にとってもオンライン接客は非常に便利なサービスといえます。

AI技術を使用したカウンセリング

化粧品業界でもAIの活用が行われており、例えば肌診断などはAIによるカウンセリングの代表例といえます。この肌診断では、シワやシミ、ほうれい線などを分析し、それぞれに合ったスキンケア方法や化粧品を提案します。このAIでは、実在の人物に関する印象データや、化粧品会社が独自に蓄積してきた肌データを参照していることから、一定の精度が期待できるといえます。

ECサイトでもこのAIカウンセリングの活用によって、実際に美容部員にアドバイスを受けているかのような体験ができるため、ECサイトの利用率が向上する可能性があると考えられます。

口コミ・ユーザーレビュー機能を活用する

ECサイトでの売上向上を目指すには、口コミやユーザーレビューは重要なポイントといえます。やはり実際にその商品を使った人のコメントは、化粧品を購入する上での疑問や不安を和らげてくれるメリットがあるため、ECサイトにレビュー機能を実装することがおすすめです。

商品を使ってみての感想はもちろんですが、利用者の肌質や年代などの情報も記入できるようにすることで、さらに具体的な情報提供につなげられます。

良い評価だけではなく時には悪い評価がつく場合もあります。しかし、これは内容によっては貴重なフィードバックであるといえるでしょう。企業側からだと見えにくい点の改善につながることも考えられます。使いやすさや商品の品質向上につなげられれば、ECサイトの売上も伸ばしやすくなります。

メイクシミュレーションを活用

AR(拡張現実)を活用したメイクシミュレーションも注目しておきたい部分です。これは、AR技術を活用し、顔の画像に対してメイクのイメージを重ねることにより、バーチャル状で化粧品を試せるものです。例えばリップやチーク、アイシャドウなどの色をパソコンやスマートフォンでチェックできます。

これは、実店舗でないと現物が使えないというECの課題を店舗に行かなくても解決できます。

化粧品業界においても
オンラインとオフラインの顧客体験が重要

こちらの記事でご紹介してきたように、化粧品のECサイトには実際の商品を試しにくかったり、オフライン店舗が多いこと、またデジタルマーケティングの難易度が高いなどさまざまな課題があります。

しかし、オンライン接客ツールやAI技術を使用したカウンセリング、ARを使ったメイクシミュレーションなどさまざまな技術を取り入れることにより、オフラインでの体験に近づけられるといえます。このように、オンラインとオフラインの顧客体験が重要になってくるといえるでしょう。

また、オフラインで商品を確認後、オンライン経由で定期購入するユーザーは数多く存在しており、定期利用者がストレスなくECサイトの利用ができる環境構築やさらなるアプローチをするための仕組み作りは、長く継続してもらうための鍵になります。

関連記事
監修
コマースとCXの
リーディングカンパニー

sponsored byZETA株式会社

ZETA株式会社はEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」をはじめとして、EC利用者の体験を包括したマーケティングの実践をサポートする『ZETA CXシリーズ』の開発・提供に取り組んでいる企業です。アパレル、家具・家電・日用品、BtoB問わず、国内大手ECに多数の導入実績を誇っています。